いにしえの日本人の生活は、四季が織りなす自然のわずかな変化さえも敏感に感じ取れるものでした。
その節目になっていたのが昼と夜の長さが同じになる春分の日と秋分の日であり、昼が最も長い夏至と夜が最も長い冬至でした。旧暦ではこの四日を太陽の位置から割り出すことによって基盤とし、これに大暑、芒種、寒露などを加えて、一年を二十四の節気に分けました。

さらに、それぞれの節気を初候、次候、末候と三つずつに分けたのが七十二候です。一つの候は四日から六日ほどで、今の1週間にもなりませんが、「鶯が山で鳴き始める」とか「紅花が盛んに咲き始める」といったわかりやすい言葉で、こまやかな四季の移り変わりを表現しています。
和菓子の世界では、このこまやかな季節の移り変わりをお菓子を通じて表現します。四つの季節だけでなく、二十四節気の一つをテーマにしたお菓子や、七十二候の一つを名前にしたお菓子なども作られており、見る人たちに季節の移ろいを感じさせてくれます。
お店にもよりますが、季節の上生菓子などは2週間に一度デザインが変わっているお店や10日ごとに新しいデザインのものに変えているお店もあります。来るたびに違ったデザインが楽しめるのも和菓子屋さんを訪れる楽しみの一つです。
例えば、桜のデザインでも時期によって形が変わります。3月頃の桜はソメイヨシノに代表される一般的な五弁の花びらのデザインが多く、4月頃の桜は八重桜が咲き始める頃なので八重桜をモチーフにしたデザインになります。5月に近づいてくると葉桜と言って、花びらと葉を組み合わせたデザインになっていきます。このように一つの題材でも時期によって様々な形で季節の移ろいを表現できるのは和菓子の魅力の一つであります。



和菓子を見る時も、お菓子を通じて今の時期が二十四節気七十二候のどの辺りなのか、またこれから来る季節はどんなものなのか想像して楽しんでもらえたら和菓子職人たちは嬉しく思います。